韓国を代表する世界文化遺産・水原華城。壮大な城壁と美しい建造物群は、伝統と革新が見事に調和した朝鮮王朝の建築美の結晶です。近年では人気韓流ドラマのロケ地としても注目を集め、多くの観光客が訪れています。

この記事では、歴史的価値と現代のエンターテインメントが融合した水原華城の魅力を、見どころやアクセス方法とともに詳しくご紹介します。

水原華城とは

特徴・魅力

水原華城の最大の特徴は、朝鮮王朝の伝統的な築城技術と西洋の近代的な建築技法を融合させた独創的な設計です。

総延長5.7キロメートル、東京ドーム約28個分に相当する130ヘクタールという広大な敷地に築かれた城郭には、4つの大門を中心に城壁や見張り台が配置されています。各建造物には実用性と美しさが両立され、当時の建築技術の高さを今に伝えています。

また、季節によって異なる表情を見せる水原華城は、春には桜、夏には新緑、秋には紅葉、冬には雪景色と、四季折々の美しい風景を楽しむことができます。特に夕暮れ時から始まるライトアップは、昼間とは異なる幻想的な雰囲気を醸し出し、訪れる人々を魅了しています。

歴史

水原華城は、朝鮮王朝第22代王・正祖が、父である思悼世子の霊を弔うとともに、新しい都市計画の中心として建設を命じた城郭です。1794年に着工し、2年9カ月の歳月をかけて完成しました。

建設にあたっては、実学者・丁若鏞が西洋の建築技術を取り入れ、伝統的な朝鮮建築の技法と見事に調和させた設計を行いました。丁若鏞は、儒学や地理学など、幅広い知識を駆使して、城郭の機能性だけでなく、美しさも追求しました。水原華城の建設過程は『華城城役儀軌』という文書に詳細に記録され、当時の社会や技術についても貴重な情報が記録されており、ユネスコの世界記憶遺産にも登録されています。

正祖は、水原華城を新しい政治・経済の中心地とすることで、王権を強化し、国勢の安定を図ろうとしたのです。

世界遺産に登録された理由

水原華城は、1997年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。登録の理由は、18世紀末の東アジアにおける築城技術の粋を集めた建造物として、極めて高い歴史的・技術的価値を有しているからです。

伝統的な朝鮮建築と西洋建築の技術を融合させた独創的な設計は、当時のアジアでは類を見ないものでした。特に、丁若鏞が西洋の学問を積極的に研究し、その知見を城郭の設計に生かした点が評価されています。水門の構造や砲台の配置など、西洋の軍事建築の影響が見られます。

また、建設過程を詳細に記録した『華城城役儀軌』が現存していることも、重要な要素として認められました。この文書により、当時の建設技術や工法を正確に知ることができ、建築史研究において貴重な資料となっています。さらに、城郭としての防衛機能と、都市の中心施設としての行政機能を兼ね備えた計画都市の先駆的事例として、都市計画の歴史においても重要な意義を持つとされています。

丁若鏞は、実学思想に基づいて、学問を社会に役立てることを目指しており、水原華城の建設は、その思想を実践した代表的な例といえるでしょう。

水原華城の見どころ

華城行宮

華城行宮は、朝鮮王朝第22代王・正祖が水原を訪れた際の居所として使われた宮殿建築です。王宮建築の格式と優美さを兼ね備えた建物群は、朝鮮王朝の建築美を代表する存在として知られています。

また、華城行宮は、政治の中心地としての機能も担っていました。正祖は、華城行宮を拠点として、水原を新しい都市として開発し、王権強化を図ろうとしました。正門である新豊楼は、その壮麗な姿で訪れる人を圧倒し、奉寿堂は、正祖が政務を執っただけでなく、重要な儀式や宴会の場としても利用されました。

華城行宮は、他の行宮に比べて非常に規模が大きく、王宮と遜色ないほどの壮麗な建物群で構成されています。

壮大な城壁・門・砲台

水原華城の象徴とも言える城壁は、その壮大さと優美さで見る者を圧倒します。土と石を積み重ねて作られた城壁は、非常に堅固な構造で、敵の侵入を防ぐための様々な仕掛けが施されていました。

特に4つの大門は、それぞれが異なる特徴を持ち、見応えがあります。南門の八達門は規模が大きく、城内と城外を結ぶ重要な門であり、北門の長安門は、優雅な曲線美が特徴的で、北側の防備の要として機能していました。

また、城壁上には当時最新鋭だった砲台が設置され、遠距離からの攻撃が可能でした。これらの砲台は、朝鮮後期の軍事技術の発展を今に伝えています。

緑豊かな庭園や池

水原華城には、随所に美しい庭園や池が配置されています。

特に、華城行宮の庭園は、伝統的な韓国庭園の様式を今に伝える貴重な存在です。また、水門である華虹門周辺の水辺空間は、城内の水を排出するための重要な施設でしたが、同時に城郭建築と自然が調和した美しい景観を作り出していました。

ライトアップされた幻想的な夜景

日没後の水原華城は、ライトアップによって昼間とは全く異なる表情を見せます。城壁や門、建物群が柔らかな光に照らされ、幻想的な雰囲気を醸し出します。特に、八達門や長安門のライトアップは圧巻で、多くの写真愛好家たちが訪れる人気スポットとなっています。

ライトアップは、単に美観を目的とするだけでなく、夜間の観光客誘致や、歴史的建造物の新たな魅力の発掘を目的としています。城壁や門だけでなく、庭園や池などもライトアップされ、多様な夜景を楽しむことができます。また、ライトアップの色やパターンは、季節やイベントによって変化することがあり、何度訪れても新しい発見があるでしょう。

ドラマ撮影に使われた名所

水原華城は多くの人気韓流ドラマのロケ地として使用され、新たな魅力を発信しています。歴史的建造物と美しい自然が織りなす景観は、ドラマの世界観を豊かに演出する舞台として重宝されています。

その年、私たちは

Netflixで配信され、世界的な人気を博したドラマ「その年、私たちは」では、水原華城の様々な場所がロケ地として使用されました。特に、城壁沿いの道や長安門周辺は、主人公たちの思い出の場所として印象的なシーンが撮影されました。

二十五、二十一

青春ドラマ「二十五、二十一」では、水原華城の桜並木道が印象的なシーンの舞台となりました。特に春の撮影では、満開の桜が美しい背景として使われ、ロマンチックな雰囲気を演出しています。

梨泰院クラス

社会現象となったドラマ「梨泰院クラス」でも、水原華城の一部がロケ地として使用されました。南砲楼周辺での撮影シーンは、ドラマの重要な展開の舞台となっています。

イ・サン

正祖（イ・サン）の生涯を描いた歴史ドラマ「イ・サン」では、水原華城が重要なロケ地として使用されました。特に華城行宮での撮影シーンは、当時の王宮の様子を忠実に再現し、多くの視聴者の心に残っています。

ソンジェ背負って走れ

「ソンジェ背負って走れ」では、水原華城の城壁や華西門周辺が印象的なシーンの舞台となりました。特に主人公たちが城壁の上を走るシーンは、視聴者の記憶に強く残る名シーンとなっています。また、華虹門でのロマンチックなシーンも、多くのファンが訪れる人気スポットとなっています。

水原華城の観光情報

入場料

2022年4月から城郭の観覧料が無料となり、これにより、より多くの方々が気軽に世界遺産の魅力を体験できるようになりました。

ただし、華城行宮など一部の施設では別途料金が必要な場合がありますので、訪問時に各施設の案内をご確認ください。

営業時間

水原華城は季節により開門時間が異なります。一般的に早朝から夕暮れ時まで観覧可能です。特に夜間のライトアップは日没後から行われ、幻想的な夜の風景を楽しむことができます。

ただし、天候や特別イベント開催時には変更される場合がありますので、事前に公式サイトで確認することをお勧めします。

●　参考：水原文化財団公式サイト

観光にかかる時間の目安

水原華城の城郭全体を徒歩で一周する場合は、約3〜4時間を要します。

しかし、時間に余裕がない場合は、八達門を起点に華虹門までの西回りコースがおすすめです。このコースは約1時間30分で回ることができ、八達門、華虹門、そして城壁の上からの美しい景色など主要な見どころを効率よく巡ることができます。

また、観光列車「華城御車」を利用すれば、より短時間で効率的に観光することも可能です。列車では、ガイドによる解説付きで水原華城の主要スポットを巡ることができます。車窓から眺める景色もまた格別です。

アクセス

水原華城へのアクセスは、ソウルから非常に便利です。ソウル中心部から地下鉄や車で約1時間でアクセスできることから、日帰り観光地としても人気があります。

最寄り駅の水原駅からは、定期運行されているバスを利用して八達門まで約15分でアクセスすることができます。また、水原駅周辺にはタクシー乗り場もあり、タクシーを利用することも可能です。

おわりに

水原華城は、歴史的価値とエンターテインメントが見事に調和した、唯一無二の観光地です。

壮大な城壁や門、美しい庭園、そして数々の人気ドラマの舞台となった場所を巡ることで、韓国の歴史と文化を深く体感することができます。特に最近では、多くの韓流ドラマのロケ地として使用されていることから、ドラマファンにとっても見逃せないスポットとなっています。

ぜひ、ソウル観光の際には少し足を延ばして水原華城を訪れてみてください。昼には壮大な歴史建造物として、夜にはライトアップされた幻想的な姿として、異なる表情を見せる水原華城は、きっと忘れられない思い出となるはずです。

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